ジキル&ハイドを観てきたよ
”河童の言いたい放題演劇評コーナー”でーす。
今回観てきたのは、ミュージカルの「ジキル&ハイド」。
日本でもお馴染の作曲家フランク・ワイルドホーンの代表作。
我輩は日本の初演も観ているが、なんと今年は15周年だそうで・・・、
あー、我輩も年を感じるなあ・・・!!
そもそもこのミュージカル、我輩が最初に観たのは、
なんとブロードウェイ版のビデオ。(DVDじゃないのがすごい!)
ジキル博士が、メイクも衣装も変えることなく、
ただ髪をほどいて振り乱し、シャツの胸をはだけて、一瞬にハイドと化す。
その演技力にただ圧倒された。
(ちなみに今でもDVD版は入手可能です)
そして日本初演。
ジキル&ハイド役は鹿賀丈史。
もちろん、彼は歌も演技もうまい役者さんだが、
この公演時、我輩が一番驚いたのは、
娼婦のルーシー役を演じていたマルシアである。
正直、彼女の歌も演技も素晴らしかったのだ。
(実際、この役でその年の文化庁芸術祭賞演劇部門新人賞を受賞した。)
さて今回の公演。
ジキル&ハイド役は石丸幹二。
(ちなみに鹿賀さんと石丸さんは、共に劇団四季出身。
ミュージカル界に劇団四季出身者は多いねえ。
あっ、そういえば濱田さんも今井さんもそうだったわ。)
そしてルーシー役は、我輩の大好きな濱田めぐみさん。
加えて、ジキルの婚約者のエマ役は笹本玲奈、
親友のアターソン役に石川禅、エマの父のダンヴァース卿役は今井清隆。
・・・とまあ、ミュージカル界の実力者揃い踏み。
し・か・し、
何故だろう、以前ほど感動できない。
たしかに何度も観ているからっていうのもあるだろうけれど、
同じように何度も観ている「エリザベート」には感動したぞ。
同行した友人は、「ジキル&ハイド」を観るのは初めてなので、
感想を聞いてみた。
「うん、面白かったよ。みんな歌うまいねー。」
そうなのだ。
皆、歌がうまい。
技術的に上手過ぎて、優等生の発表会のような感じ。
(毎回しつこく申し上げますが、あくまで河童の私見です)
石丸さんの声にはハイドの毒が無く、清涼な感じが強すぎて、
ジキルとハイドを歌い分ける場面で、それがはっきりと伝わらない。
我輩は濱田さんのファンなので、認めるのは残念なのだが、
ルーシー役は明らかにマルシアの方が合っていた。
演技や歌の技術以前に、本人の持っている雰囲気とか、
声の質といったものが、あまり合わないように思える。
濱田さんは歌がうまく声量もあるので、清楚な役より、
色っぽい挑発的な女を演じることが多いようだが、
我輩には、正直、彼女はあまり色気のあるタイプには見えないのだ。
特に今回のルーシー役には、”勝気で挑発的な色気”と”臆病で不安定な弱さ”
という両面性が求められるが、
我輩には”明るく健康的な色気”に満ちた女性が、
”演技力・歌唱力への自信”に溢れて歌っているように感じられてしまった。
誤解しないで頂きたいが、このミュージカル、
作品としての完成度はかなり高い。
出演者のレベルは高く、演出もいい。
観ようか迷われている方には、是非お勧めする。
ただ、本当に舞台というのは不思議なものだ。
演技がうまい、歌がうまい、脚本がいい、演出が素晴らしい・・・
何かが欠けたら成り立たないようでいて、
全てが揃えば良いというわけでもない。
何が人を感動させるのか・・・?
うーん、旅館の仕事にも繋がる難しいテーマですな。