ラブ・ネバー・ダイを観てきたよ
話題のミュージカル「ラブ・ネバー・ダイ」を観てきた。
「オペラ座の怪人」の続編とも言えるこのミュージカル、
我輩はロンドン版のCDとメルボルン版のDVDを持っているのだが、
「オペラ座の怪人」と比べると、あまり好みとは言えないと思っていた。
壮麗で上品だった前作に比べると、猥雑で下世話な(よーするに昼メロっぽい)感じがする。
(まあ、舞台がパリオペラ座からコニーアイランドの見世物小屋に移ったのだから当然だけど。)
ストーリーには無理があるし、展開は暗いし、登場人物もいまいち魅力がないし・・・。
実際、初演のロンドン版は、評価が低く、1年半ほどで終わったらしい。
なのに、何故、観ようと思ったのか?
まずは、キャストの魅力。
我輩は日本初演の時の「オペラ座の怪人」を観ているので、
やはり”ファントム”といえば、市村正親さんなのだ。
それと、クリスティーヌ役の濱田めぐみさん。
「二都物語」にも出ていたが、彼女の歌唱力には圧倒させられる。
この二人のコンビで観てみたいと思った。
それと舞台装置。
今回の日本公演は、ロンドン初演とは演出を変更し、大胆なセットで話題になったメルボルン版で、基本的にそのセット(縮小版)を持ち込んでの上演。
これだけでも、一見の価値があると思ったのである。
で、感想。
予想より何倍もよかった!
この作品、歌唱力の要求レベルがかなり高いので、キャストは重要。
主要キャストはすべてダブルキャストなので、どの組み合わせで観るかで、
感想も変わってくるかもしれない。
我輩が観た回のキャストと感想は以下の通り。
(毎度お断りしているように、あくまで我輩の私見ですぞ。)
<ファントム>市村正親
歌唱力という点では、時折不安定なところがあったが、
何といってもその感情表現の繊細さは素晴らしい。
彼のファントムは、その所作の隅々にまで注目して欲しいと思う。
<クリスティーヌ>濱田まゆみ
圧巻の歌唱力!
彼女の歌う「ラブ・ネバー・ダイ」は、ダブルキャストの平原綾香さんが、
すでに日本語カバーで歌っていて、ロンドン版CDに収録されている曲。
否が応でも、気合いが入るってもんでしょ。
とにかく上手いので、どの曲でも一番安心して聞いていられましたぞ。
6月に主演する「カルメン」も観たいものです。
<ラウル子爵>橘慶太
ちょっと残念だったのが、この人。
大変ビジュアルは良いのだけど、歌唱力では数段劣る感じ。
”知らない役者さんだなぁ”と思ったら、ダンス&ボーカルユニットのメンバーで、ミュージカルは初めてだそーで。
この錚々たるメンバーと伍するのは、ちと荷が重すぎましたなあ。
<メグ・ジリー>彩吹真央
宝塚時代も何度か観ているけど、この役はちょっと似合わない感じ。
歌もダンスも上手だから、ショーの場面とかはいいんだけど、
認められたい渇望と狂気が、この人からは感じられない。
そもそもメグ・ジリーの人物造形にかなり無理があるけどね。
<マダム・ジリー>香寿たつき
前作に比べて、すごく怖くパワフルになったこの役。
迫力満点に演じていて、歌もGOOD。
でも、ダブルキャストの相手は宝塚の大先輩で強烈な個性の鳳蘭。
おどろおどろしさでは、やっぱり負けそう・・・。
<グスタフ>山田瑛瑠
今回の公演で驚かされたのが、子役のうまさ!
この役はトリプルキャストで、有名な加藤清史郎君も出ていて、
山田君は彼の事務所の後輩だそうな。
この役結構、歌うシーンが多いんだけど、音程も確かで、
市村さんとか濱田さんと掛け合いで歌っても引けをとらない!
いや~、子役恐るべし!
装置は期待通り、素晴らしい。
ストーリーや人物造形はともかく、一見の価値がある作品であることは確か。
日本人キャストの持ち味のせいか、DVDで観たメルボルン版より、
昼メロっぽい俗な感じも薄まっているようだ。
そのおかげで、登場人物にも感情移入しやすくなっている。
ラストのファントムの絶叫に涙、涙・・・。
(我輩もちょっとだけ泣いちゃいました。)
カーテンコールは総立ちのスタンディングオペレーション。
不思議なブラボーオジサンがいて、ちょっとびっくり。
この公演、すでにチケットは全席完売だそうで。
でも、この入りならば、きっと再演するでしょうねえ。
キャスト次第では、また観たい作品だけど、
さすがに市村さんは、もう無理だろーなあ・・・。